あした見る夢 価格:¥ 588 納期:通常2日間以内に発送 人気ランキング : 214,271位 定価 : ¥ 588 販売元 : 朝日新聞社 発売日 : 2003-02
かつて管野スガの伝記小説「遠い声」や、金子文子の「余白の春」など、天皇制に抵抗した女性たちを描いていた作家が、皇后さまのお話に感動したなどと書くのは、醜悪である。
寂聴さんのエッセイである。さまざまな話があり、自分の記憶に残った話をいくつか書くと、渡辺浩さんという方が、中国側シルクロード4000kmを歩いて踏破したという話を読んだ。かねてからの夢であったそうだが、こういう夢を現実しようという発想に、まず驚かされてしまう。さらに夢を現実にしてしまった氏にはもっと感動させられた。また、皇后陛下のお話で、幼い頃、読書により人生の根っこのようなものに触れ、飛ぶ翼を与えられたという話には、意外な皇后陛下の話を聞け感銘した。少し話が飛ぶが、「日本人はいつのまにか、金やモノばかりに心を奪われ、本来の優しさや誠実さを忘れてしまったのではないのか」という記述がある。これは、僕も普段よく考えるが、日本人は一体どうしてしまったのかなと思うことがある。塾や予備校で試験ばかりして、人のことを偏差値で判断しているようでは、人の心も育たなかったのだろう。何のために勉強するのか? 社会を不幸にするためだったのか? 今までは、表面的なことにとらわれてきて進んできたのであれば、これからは、もっと本質を変えてゆこうとか、(モノなどの)物質文明ではなくもっと精神文化を高め、人の心を豊にすることはできないのだろうか?あと、寂聴さんが川端康成氏に「飛行機に乗るのは好きですか?」と聞かれ、「僕も好きです。いつも乗っているときこの飛行機が落ちれば」と思っている、という不吉な静かな声を、人影もない桜が舞う京都の哲学の道で聞いた。という話がやけに頭に残っている。書評をまとめると、賛同できる考え方、落ち込んだときなど読むと元気にさせてくれる話、また今の平凡な生活では知りえない心に残る話を読ませてもらえるため、自分としてはお薦め度☆5つ。