渇く 価格: 納期: 人気ランキング : 643,536位 定価 : ¥ 509 販売元 : 講談社 発売日 : 1996-12
▼ある種の小説は読み進むうちに、ストーリーとはかけ離れたところでひとつのイメージが形を結んでいく感覚を与えてくれる。瀬戸内寂聴の「渇く」を読みながらも頭とは別のところで何かが形を成していくのが感じられた。愛というもののとりとめもなさ。命というものの底を流れる川のうねり。死をも含めた現実を生きることの喜び。ちゃんちゃらおかしさ。▼渇き、ではなく、渇く。鋭いタイトルのつけ方だ。真正面から生きている人のタイトルのつけ方だ。嘘もなく、不必要な、ばかばかしいだけの真面目さもない。人間というけだものとしてきちんと生きている人の言葉だ。
この作品はインドに見せられた女性と優しすぎるが故、妻に別れられてしまった男との愛物語です。お互いに思いあっていながらインドに行ってしまった女性。振られたと思い、悲しんでいたら不治の病にかかってしまった男性。男性の容態を聞き女性はあわてて日本に帰ってきて、残り少ない余生を二人でインドで過ごし、やがて男性に死が訪れます。わずかの期間でも毎日毎日を精一杯生きれば、思い残すことなどないと言うことに気付くのです。本筋とは別にインドのことがかなり詳しく紹介されていますよ。